行動計量学
担当: 菊地
第9回 2標本検定
2011.6.23
9.1 母平均の差の検定
二つの正規母集団の母平均の差の検定は、実用上最も重要である。例えば、新しい治療法の効果を調べる場合を考える。この場合には、患者を二つグループに分けて、片方だけに新しい治療法を行い、グループの差を検定する。これを2標本検定と呼ぶ。
二つの正規母集団N(μ1,σ12)、N(μ2,σ22)のそれぞれから大きさm、nの標本{X1, ..., Xm}、{Y1, ..., Yn}を抽出する。
このとき、帰無仮説は
-
H0 : μ1=μ2
であり、対立仮説は、
-
- H1 : μ1≠μ2
である。
- 分散が等しい場合
-
二つの分散が等しく、σ12=σ22=σ2の場合には、二つの標本を合併した標本分散
-
s2 = {(m-1) s12 + (n-1) s22} / (m+n-2)
を用いた2標本t統計量
-
t = (Xmean - Ymean) / {s √(1/m + 1/n)}
を検定統計量として用いる。このtは、帰無仮説が正しければ、自由度m+n-2のt分布t(m+n-2)に従う。
よって、|t|>tα/2(m+n-2)のとき、棄却される。
- 分散が等しくない場合
-
二つの母分散が等しくない場合には、ウェルチの近似法を用いて、t統計量を計算し検定統計量として用いる。
まず、tは、
-
t = (Xmean - Ymean) / √(s12/m + s22/n)
として計算し、これを検定統計量として用いる。このtは、
-
に最も近い整数をν*とすると、自由度ν*のt分布t(ν*)に近似的に従う。
よって、|t|>tα/2(ν*)のとき、棄却される。この検定をウェルチの検定と呼ぶ。
なお、標本Xi、Yiが、それぞれ、すべて対応して対として観測されている場合を対標本と呼ぶ。このような場合には、二つの母集団としてではなく、差Xi-Yiを計算してそれをデータと見なし、母平均の差の検定ではなく、単なる母平均の検定を行う。
9.2 母分散の比の検定
二つの正規母集団の母平均の検定は、母分散が等しいかどうかによって異なる。そのため、それがわからない場合には、まず、母分散が等しい(母分散の比=1)かどうか、検定を行う必要がある。また、そもそも、母集団の分布の散らばり具合に興味があり、母分散が等しいかどうか自体を検定したい場合もある。
帰無仮説は
-
H0 : σ12=σ22
であり、対立仮説は、
-
H1 : σ12≠σ22
である。ここで帰無仮説が正しい場合には、フィッシャーの分散比
-
F = s12 / s22
は、自由度(m-1,n-1)のF分布F(m-1,n-1)に従うので、これを検定統計量として用いる。
すなわち、F1-α/2(m-1,n-1)<=F<=Fα/2(m-1,n-1)のときには棄却せず、F< F1-α/2(m-1,n-1)、または、F>Fα/2(m-1,n-1)のときには、棄却する。このようなF統計量を用いた検定をF検定と呼ぶ。